「清潔さ」に関するクチコミの影響力
日本では、5月に新型コロナウイルスが5類感染症に移行しましたが、今もマスクを着用して接客をされているホテルの皆様も多いのではないでしょうか。ホテルや旅館に宿泊するゲストは、以前より「清潔さ」を重要視してきましたが、それがコロナ禍に入るとその傾向がより強くになりました。新型コロナウィルスが一段落した現在も、旅行者にとって宿泊施設の「清潔さ」は予約する段階で最も気にしている情報なのでしょうか?本ブログでは、世界の各地域ごとに関連するクチコミデータを見ていき、旅行者の意識を探っていきたいと思います。
「清潔さ」は、顧客満足度に大きな影響を与える
清潔でメンテナンスの整った宿泊施設は、チェックイン時にゲストに良いな印象を与えることができ、それはゲストの滞在中の満足度に好影響を与えます。 清潔な客室やベッド、バスルーム、手入れの行き届いた共用エリアは、ゲストの滞在が快適にし、滞在の満足度アップにつながります。
また、「清潔さ」は宿泊施設に関するクチコミやレビューの中で、多くコメントされることがらのひとつです。 TrustYouのクチコミデータを見るとわかりますが、清潔さに関するネガティブ(批判的)なクチコミは、宿泊施設のオンライン上の評判に深刻な影響を与える可能性があります。下記のようなクチコミ投稿が、旅行者の予約前の重要な情報源となっています。
インパクトスコアの推移を見る
TrustYouのクチコミ指標、インパクトスコアは、150以上のクチコミカテゴリーから、それぞれのクチコミカテゴリーが宿泊施設のクチコミスコア全体にどのよに影響しているのかを表示します。例えば、「バスルーム」、「客室の清潔さ」、「サービス」、「朝食」、「ロケーション」に関するクチコミがどの程度、施設全体のクチコミスコアに影響を与えているかをデータで把握できます。
インパクトスコアは、各カテゴリをネガティブ(批判的)かポジティブ(肯定的)な影響を与えているものに分け、それぞれのTOP3を表示します。ネガティブスコアとして表示されれば、改善を必要としているカテゴリー(要素)であることが分かり、逆にポジティブスコアであれば施設の長所となるカテゴリーであることが分かります。
TrustYouではコロナ渦中に世界の宿泊施設のクチコミスコアに最もマイナスの影響を与えていた清潔さの3カテゴリー、「バスルームの清潔さ」、「客室の清潔さ」、「ダイニングスペースの清潔さ」の変遷を地域ごとに調べました。下記、そのデータをご紹介します。
#1 世界:「清潔さ」の影響は減少、それでもスコアには大きな差が
2021年〜2023年にかけて、世界の宿泊施設のクチコミスコアに最も悪影響を与え続けた清潔さに関するクチコミカテゴリーは、 「バスルームの清潔さ」、「客室の清潔さ」と「ダイニングスペースの清潔さ」でした。
下記の折れ線グラフを見ると、マイナス値の影響が大きかったのが2021年第1四半期で、この時期はまだ世界の大半がロックダウンの状態で、EU諸国を中心にウィズコロナの中、旅行行動の回復が始まった時期です。各国でコロナ対策や公衆衛生の意識を高めながら、国内で旅行を再開しはじめ、国境を開く方法を模索していました。
折れ線グラフを見ると、「客室の清潔さ」と「バスルームの清潔さ」は同じ動きをしており、2021年と2022年の第3四半期とポジティブ傾向になっています。また、「ダイニングルームの清潔さ」のスコアに大きな動きがなく緩やかに回復していることが分かります。
2023年第1四半期と2021年第1四半期との比較では、全3カテゴリーを通して、ポジティブ傾向に転じましたが、「清潔さ」は依然として全体のクチコミスコアを左右する最も影響力のあるクチコミカテゴリーです。
では、世界の地域ごとはどうなのでしょうか。EMEA地域から見ていきたいと思います。
#2 EMEA(ヨーロッパ・中東・アフリカ):大きな変化ないが、「清潔さ」は引き続き重要
世界でも一番早く旅行が再開されたEMEA地域ですが、期間中に「清潔さ」が地域全体のクチスコアに与える影響に大きな変化は見られませんでした。 世界のスコアと同様に2021年第1四半期に3カテゴリーのすべてが最も高いマイナス値を記録しています。逆に全体的に最もプラス傾向だったのが2021年第3四半期でした。
他の地域と比較すると3つのカテゴリー全てがプラスに転じており、EMEA地域は「清潔さ」が全体的なクチコミスコアに与えるマイナスの影響が最も少ない地域のひとつといえます。
#3 APAC(アジア太平洋):2023年も「清潔さ」に関するクチコミの悪影響が続く
APAC地域は世界でも少し遅れて、コロナ関連の規制が緩和された地域であり、その中でも中国は2022年第4四半期末に国境を開いたばかりです。ですので、世界やEMEA地域とは若干数値の動きが異なります。
世界やEMEAと比較すると、「バスルームの清潔さ」と「客室の清潔さ」が2021年第3四半期まではマイナス値は低くなっていますが、各国で国内旅行が再開された2021年第3四半期以降は、マイナス数値が上昇しています。だだし、「ダイニングエリアの清潔さ」は比較的世界やEMEAと同じ動きをしています。そして、2023年第1四半期には3カテゴリ共にマイナスの影響力はゆるやかに下降しています。
グラフ内には記載していませんが、2022年第2四半期のみ「ダイニングエリアの清潔さ」は悪影響TOP3に入らず、代わりに「プールの清潔さ」がTOP3に入っていました。
引き続き、APAC地域内は宿泊施設は、「客室の清潔さ」と「バスルームの清潔さ」に注意を払う必要があります。
#4日本: 引き続き、「客室の清潔さ」に注意が必要
日本では、2021年第3四半期の最終日(9月30日)に緊急事態が解除され、国内旅行が再開されたことにより、徐々に客室稼働率が上がってきました。そのタイミングで、3つのカテゴリーが同時にマイナス数値が上昇していることが分かります。恐らく急に稼働が上がった中で、宿泊施設の清掃が人手不足等で追いついていなかったことと、ゲストが清潔さに過敏になっていたことが推測できます。
「ダイニングルームの清潔さ」の影響は、2021年第3四半期にマイナス数値が最高になり、以降少しづづ改善はしていき、世界の地域と同じような数値になっています。
APAC地域と同様に日本の宿泊施設では特に「客室の清潔さ」に注意を払う必要があります。
#5 米国:清潔さは業績スコアを左右する
米国は他の地域に比べ、ポジティブ(肯定的)なクチコミの比率が最も低い地域で、「清潔さ」に関する批判的なクチコミが同地域の宿泊施設のクチコミスコアを左右します。「清潔さ」の悪影響TOP2カテゴリのスコアを見ると、-10以上の数値が見られます。
他の地域にはない、アメリカ特有の清潔さの要素「ホテルの清潔さ」が悪影響TOP3に入っています。 ゲストは、ホテルの建物、アメニティ、周辺環境がどれだけ整備され、清潔に保たれているかに注目していることが分かります。 グラフには表記していませんが、2021年第1四半期のみこのときは「プールの清潔さ」が代わりにランクインしていました。
「バスルームの清潔さ」は2021年第1四半期に最もマイナス値が高くなり、2021年第3四半期に最低値をとなっています。 「客室の清潔さ」はほぼ横ばいで、すべての四半期で2桁のマイナス値を記録しています。 「ホテルの清潔度」も大きな変化はありませんが、2022年第3四半期のマイナス値が一番高くなっています。
米国内の宿泊施設では、引き続き「清潔さ」に関するクチコミが全体のスコアに与える影響が大きいため、注意が必要です。
各地域で若干、傾向は異なるものの、アフターコロナの中でも引き続き、「清潔さ」に関するクチコミには注視する必要があり、どこの国でも清掃やメンテナンスは重要な要素であることが分かります。また、世界の各地域の傾向を見ることで、インバウンドのお客様を迎え入れる場合も今回ご紹介した清潔さの3カテゴリーが重要であることが分かります。
宿泊客のレビューがホテルの清潔度を維持し、スコアを向上させる5つの方法
ゲストからいただくレビューやクチコミは、ホテルの清潔水準を高く維持し、ホテルのスコアを向上させる上で重要な役割を果たします。 肯定的なクチコミはホテルの評判を高め、予約の向上のみならず、リピーターの獲得、収益の向上にもつながります。
繰り返しにはなりますが、 「清潔さ」に関するゲストの満足度を向上、維持するためのクチコミ活用方法をご紹介します。
#1 クチコミの収集
オンラインアンケートやGoogleやOTAなどのチャネルを通じて「清潔さ」に関するクチコミを書いていただけるようゲストに依頼すると良いでしょう。ゲストからいただくコメントは、改善に向けた貴重な情報となり、「清潔さ」の改善を意識している施設としても好印象を与えるでしょう。
#2 クチコミへの返信、対応
ゲストのクチコミ、特に「清潔さ」に関する内容のものには早めに返信し、対応する。 まずは、謝罪をし、 提起された問題に対し、解決に向けた取り組みをすることをコメントとして伝えます。 ゲストの懸念事項を真剣に受け止める施設と、「清潔さ」へ対する施設側の意識をアピールします。
#3 ゲストレビューのモニタリングと分析
「清潔さ」に関するクチコミを定期的に分析することで、清掃についての改善点や、設備についての改善点を特定していきます。 同様のネガティブなクチコミ投稿が増えたり、問題がエスカレートする前に調整、修正することが可能となります。
#4 改善のマインドセットを社内で浸透させる
ゲストから届くクチコミは貴重な「お客様の声」であり、改善をするための貴重なデータでもあります。クチコミのパターンや傾向を分析し、スタッフで共通の懸念事項を共有し、目標を決めて改善に取り組むことが重要です。忙しい中で、改善に取り組むマインドを社内で浸透させ、スタッフ全員が同じマインドを自然に共有できる環境を作ることが顧客満足度(CS)向上に向けた第一歩です。
#5 スタッフへの投資
清掃に関する研修やトレーニングを実施したり、清掃に関わるホテルスタッフやアルバイトを評価し、表彰するシステムを作ったり、スタッフに投資することで社内の意識が変わります。