TrustYouは、2022年2月15日から18日まで東京ビックサイトで開催されたHCJ2022国際ホテルレストランショーに出展しました。引き続き、ウィズコロナ(コロナと共存)する状況が続いていますが、展示会では多くの業界の方々が情報取集をされたり、新たな知識について学ばれたりする姿が見られました。
17日(木)には、会場内で開催されたセミナーに登壇させていただき、約60名の方にご参加いただきました。今回は、その講演内容「お客様の声をデータ化、活用することの重要性」の一部をご紹介させていただきます。

1)クチコミから読み解く現状
さて、日本のマーケットの現状を見ていきたいと思います。過去3年間の日本のOTAサイト別のクチコミのシェア(クチコミ件数の割合)について見てみると、国内外のOTAのクチコミのシェアはあまり大きな変化がないのが分かります。国内OTA(楽天トラベルやじゃらん.net)のシェアは若干伸びてはいますが、シェアの1位はBooking.com、2位はGoogleとなっています。
シェア第1位のBooking.comは、2019年度が63%、2020年は65%、2021年度は56%と推移しており、微減に留まっています。また、Googleはユーザーがマップ検索などから施設を探し、クチコミやレビューを投稿しやすいため、引き続き多くのクチコミを集めています。スコアのみの評価を投稿できるサイトがよりクチコミ投稿数を集めている傾向もあると思いますが、このように世の中のクチコミの影響度をデータからしっかり見ていくことが重要です。
さらに、下記のスライドから、過去2年間の稼働率とクチコミ数の推移を見てみましょう。稼働率(イエロー)は引き続き厳しい状況が続いています。当たり前ではありますが、クチコミ数(グレー)は稼働率に比例していることが分かります。
さらに、クチコミスコア(ブルー)を見ると2021年は上昇傾向であったことがわかります。2020年度では、ブッフェスタイルのお食事を中止した際に全体のクチコミスコアが下がったホテル様も見られました。現在では、既にお客様にとって、施設側のコロナ対策は当たり前となっていて、ブッフェスタイルのお食事も再開されているホテル様も多いと思います。
それでは今後はどのような対策が必要なのでしょうか。「何を目的に、なぜ当館を選んでいただけたか」、お客様の期待値を確認し、期待値に合ったサービスを提供しつつ、「何かプラスαの価値を提供する」ということが重要です。それにより”おもてなし”のレベルがさらに上がるのではないでしょうか。
TrustYouのクチコミ分析ツールでは、“マスク”、”消毒”、”ソーシャルディスタンス”といった「公衆衛生」に関するクチコミカテゴリを設定し、分析、スコア化しています。2021年に入ると、日本全国の宿泊施設において、「公衆衛生」についてのクチコミ投稿数(グリーンの線)が安定し、ポジティブ(肯定的)なクチコミの割合が前年比で上がっていることが読み取れます。逆にコロナでお客様の興味・関心が集まっているのは「清潔さ」というカテゴリーです。このカテゴリーにおいて、ネガティブ(批判的)なクチコミ数の割合が増えており、お客様の「清潔さ」に関する期待値がとても高くなっていることが分かってきました。
2)2022年トレンド予測
さて、現状を踏まえて、今後のトレンドはどうなるのでしょうか。まだ新型コロナウィルスが収束した訳ではありませんが、旅行業界が少しずつ進化する年となることは間違いありません。
弊社では下記3つのトレンドを予想しています。
- ライフスタイル(Quality) – 旅することへの欲求を満たす、心を癒す滞在体験
空白の2年間の中で、旅に対する欲求が高まっていて、それをホテルに満たして欲しいというお客様の欲求があります。日本の旅行者の74%が「旅行はどんな休息やリラクゼーションよりも幸福につながる」と考えているとの調査結果があり、改めて“旅行は素晴らしい”と思うようになっています。消費者の傾向が、「モノ消費」から「コト消費」、そして「ココロ消費」に移ってきていおり、ビジネス、ラグジュアリーに関わらず、ここに取り組んでいるホテル様も増えてきているのではないでしょうか。
- サスステイナブル(Ecology)– 持続可能かつ環境に優しい、宿泊施設全体でのおもてなし
ホテルの施設のSDGsやサスティナビリティに対する姿勢に注目するお客様が少しずつ増えてきています。欧米圏を中心に、エコ対策指標を掲げたホテルが増加していて、旅行者の意識も高まっていると言えます。日本では、“連泊エコプラン”に関するクチコミが多く見られますが、「泊まることでサステイナビリティに貢献している」という思いを持つお客様も増えています。
- テクノロジー(Contactless Communication) – 利便性や効率性もサービスの質向上の一部に
密回避のコミュニケーションが主流になる中で、おもてなしを進化されることも重要となってきています。「テクノロジーでできること」と、「人にしかできないおもてなし」を明確化し、デジタルとアナログを融合することが求められています。テクノロジーと共に進化するお客様のニーズをどのようにキャッチすれば良いのでしょうか。それは、滞在中にお客様の声を聞いていただくことを弊社では推奨しています。
今後、旅行が多様化していく中で、より安全で、高い品質での接客やサービスが求められます。お客様の声を早い段階で収集し、ニーズに合ったサービスを提供することが今後のトレンドとなっていくでしょう。顧客満足度向上のためには、従業員同士のコミュニケーションも効率性を高める必要がありそうです。弊社でも、お客様の滞在中のツールを開発し、サポートのご提案をさせていただいています。
3)お客様の声をデータ化、活用することの重要性
TrustYouでは、コロナ禍の中でホテルやパートナーの皆様が、どのような取り組みを実施されているか、今後お客様にどのように向き合うのか、などのテーマを経営陣の皆様にインタビューと通してお伺いする、TrustYouトップインタビューや、ユーザー様向けの勉強会TrustYou User MeetUpを実施しています。そこで、下記のようなお話をいただいています。
品川プリンスホテル 佐々木総支配人:レベニューとレビュー(クチコミ)を経営指標にしている。お客様の価値は千差万別でお支払いが妥当かどうかはお客様が判断しますので、そこを合わせることが必要とのことでした。同社では価格とクチコミ評価の相関性を見てらっしゃいます。
アイアンドエフ・ビルディング株式会社 泉代表:TrustYouのクチコミ分析ツールから配信されるクチコミのアラートメールをビジネスチャットツールのSlackに連携させ、アルバイト方にもクチコミを見せてらっしゃるそうです。情報格差を社内で無くす取り組みをされています。
株式会社小田急リゾーツ 鈴木社長:売上を上げるためには、コスト削減に取り組むだけでは難しい。プロジェクトチームを組んで、お客様にさらに近づく方法をリアルとデジタルで模索されています。どこを強化すべきか、明確化すべきか、クチコミデータを活用し取り組んでらっしゃいます。
東芝デジタルソリューションズ RICIAS事業部 エバンジェリスト 香川様:「D X化するために何かをするのではなく、何かをしたら結果的にD X化した」となるべきだとおっしゃっていました。インカムの音声を自動的にテキスト化(データ化)、またテキストを音声化するAI(人工知能)、RICIASのプロジェクトを進めている香川様ですが、「デジタル化をすることが目的ではなく、何をすればお客様に喜んでいただけるか、その結果がDX化となった」というケースを増やしていきたいとのことでした。
物流業界で話題となっている2024年問題、働き方改革というテーマがあり、旅行業界でも同様のテーマに直面していると思います。「人ができること、人にしかできないこと」、「テクノロジーでできること」を明確にしながら、その二つを融合させることが重要です。国境が開く前に、どういう取り組みをするか、皆様とご一緒に考えさせていただけると嬉しいです。