2022年のクチコミ数から見た、世界における旅行行動の回復
2022年、世界の旅行・ホスピタリティ業界では、コロナ禍からのビジネスの回復が見られるようになりました。各国の入国規制の大幅な緩和により、消費者も海外旅行を再開し、街中でも外国人観光客を見かけるようになりましたが、実際に世界における旅行行動はどの程度回復したのでしょうか。今回は、TrustYouが2022年に収集した1億件以上のクチコミデータベース（ビックデータ）から世界および各地域の回復状況をご紹介します。
#1. 宿泊施設のクチコミ数は、公的機関発表の指標と共に回復傾向に
世界の宿泊施設のクチコミ数は 2019年比で69%まで回復
2022年に公的機関が発表したトラベル＆ツーリズム関連のデータとTrustYouのクチコミデータを比較すると、双方のデータが比例して回復傾向にあることがわかりました。例えば、 国連世界観光機関(UNWTO) は「2022年、海外旅行がコロナ前のレベルの63%で回復した」と報告し、 IATA(国際航空運送協会) は「2022年の航空交通（エアートラフィック）が2019年の68.5%まで回復した」と報告しました。これらの指標と、TrustYouのクチコミデータを見てみると、クチコミ数においては同様の回復傾向が見えました。もちろん、2022年に各国での旅行行動の回復を牽引していていたのは国内旅行でした。
#2. 第3四半期にクチコミ数が最大に、第4四半期には2019年度との比較値が最高に
2022年、世界で最もクチコミ数が多くなった時期が、夏休みの旅行シーズンとなる第3四半期でした。多くの旅行者が、コロナ禍（パンデミック）に入って以来、国内旅行だけでなく久しぶりに国境を越える旅行も再開した時期です。
上記グラフにて、2019年との比較値を見ると、第4四半期の回復率が73%と最も高く、コロナ禍前のクチコミ数に最も近づいています。
#3. EMEA：世界で旅行行動の回復が最も早い地域
EMEA（欧州、中東、アフリカ）地域では、EU政府が2022年の初めからコロナ関連の規制解除を進めたことで、消費者の旅行行動の回復が始まった時期も他地域に比べると早かったです。
EMEA地域の宿泊施設のクチコミ数は 、2019年比で79%まで回復
2022年はEMEA地域にとっての挑戦の年でもありました。ロシアのウクライナ侵攻が始まり、様々な政治的、経済的問題が人々の消費行動にも悪影響を与えることになりました。しかし、旅行業は力強い回復を見せ、夏の旅行シーズンには実際に特定の地域において GOPARなどのホテルの経営指標も回復を見せました。
第３四半期には、地中海地域の観光地にて旅行ブームが起き、EMEA地域でのクチコミ件数は年内で最大となりました。最も回復が見られたのは2022年の第4四半期、2019年度比で86%まで回復しました。
#4. APAC：未だ回復の途中にある地域
APAC（アジア太平洋）地域における旅行行動は、過去3年間にわたり停滞していました。各国の政府が入国規制を少しづづ緩和した2021年には、緩やかな回復が見られましたが、その回復のスピードは他の地域よりも遅いものでした。 ただし、2022年第４四半期は、中国がコロナ対策の政策を転換させるなど、転換期であったといえます。
2023年のAPACのクチコミ数が、コロナ前のレベルに戻るとは断言できませんが、回復に向けた明るい兆しが見えていることは確かです。海外からの入国者数は少しづづ増えてきており、今後の数ヶ月でさらに規制の緩和が進むことが予想されています。
APAC地域の宿泊施設のクチコミ数は、2019年比で50%まで回復
人口も増加傾向にあり、中産階級が増えているAPAC（アジア太平洋）では、今後その旅行需要がコロナ禍前を越えると予想されています。UNWTOは、2025年には地域全体のGDPに旅行業が寄与する割合が32% までになると予測しています。
地域の緩やかな旅行の回復を反映して、クチコミ数は四半期ごとに一定の増加を示しています。2022年の第2四半期には、シンガポール、タイ、ベトナム、日本などの国々が旅行の入国条件の緩和を開始し、第3四半期には海外旅行を奨励するためのさらなる措置がとられ、第4四半期には中国がゼロコロナ政策の終了を発表しました。
2019年との比較で回復傾向を見ると、各国の緩和策を反映し、四半期ごとに緩やかな上昇傾向にあります。2023年には、この数字がより速いペースで増加していくことが期待されます。
#5. 日本：APAC地域全体より速いペースで回復
2022年における日本国内のクチコミ数の推移は、APAC地域全体に比べると、とても速いペースでの回復を見せています。この伸びは、地域別の重点措置といったコロナ関連規制の解除や、全国旅行支援などの自治体の旅行換気施策により、国内旅行が本格的に再開されたことにあります。
日本国内の宿泊施設のクチコミ数は、2019年比で61%まで回復
2022年3月30日に、重点措置等の規制が完全に解除され、少しづづですが、第２四半期以降に旅行行動の回復がクチコミ数の増加といった形で現れています。
2022年3月30日に、重点措置等の規制が完全に解除され、少しづづですが、第２四半期以降に旅行行動の回復がクチコミ数の増加といった形で現れています。10月には全国旅行支援が開始、海外からの個人旅行の受け入れを再開したことで、第4四半期にはさらに伸びています。しかし、年間では2019年度比で61%と、2023年には同レベルまで戻らないまでも更なる回復を期待しています。
#6. US（米国）：旅行行動の回復には、国内旅行の増加が寄与
米国の宿泊施設に関するクチコミ数は、2019年比で61%まで回復
2022年の初めには、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、米国の消費者はヨーロッパ旅行をはじめとるす海外渡航には躊躇をし、国内旅行の方が活発でした。しかし、第2四半期末に米国への入国条件が撤廃されると、状況が変わりました。残念ながら、最大400日というビザ支給の待ち時間の問題もあり、インバウンド旅行者の回復に大きな影響がありましたが、2023年にはビザの支給にかかる処理時間を短縮することで、更なるインバウンド旅行回復を目指しています。
上記の米国もそうですが、世界的な傾向として、2022年第3四半期が最も好調であったことが分ります。2019年との比較値で見ると、第4四半期の数字がコロナ前のレベルに最も近くなっています。
#7. 肯定的（ポジティブ）なクチコミの割合
TrustYouのReview Insights Report 2022にて、世界のクチコミの全体の91%が肯定的（ポジティブ）であったという結果を発表しましたが、2022年もそこに大きな変化はなく、各国の宿泊施設が品質とサービスの維持に注力していることがうかがえます。
地域別に見ると、2022年はEMEA地域のホテルの94%が肯定的と最も良い評価を得ています。また、APAC地域も日本を含め93%のクチコミが肯定的な内容となっています。歴史的に、米国は肯定的なクチコミが少ない地域として知られています。しかし、2022年は83％のクチコミが肯定的でした。これは、ホテル経営者や観光地が、宿泊客や観光客の満足度を高めるために絶えず努力していることを改めて証明しています。
#8. 2023年、今後の回復について
2023年も消費者の旅行行動の回復は続き、EMEA地域ではコロナ前、またはそれを超える可能性が高いでしょう。この地域では、コロナ禍、戦争、エネルギー価格の高騰なの問題があったにも関わらず、旅行行動の回復力が何度も見られました。また、すでにオーバーツーリズムを経験した地域もあり、地域社会の繁栄と自然・文化的価値の保全のために、持続可能な戦略を模索しています。
APAC地域にとっては、回復につながる明るい素材が多いといえます。中国の旅行再開は、APAC地域だけでなく、世界的な旅行を後押しすることになります。2023年の前半においては、当局がビザの発給や入国や感染対策などの管理を続けているので、本格的な回復はまだ先になるかもしれません。
米国においては、ビザ発給の待ち時間を短縮し、インフレの問題はあるものの世界有数の魅力的な旅行先としてのプロモーションを再開することが最優先事項といえます。
2023年、注目すべき4つの旅行トレンド
世界の旅行者の嗜好やトレンドを見ていきながら、本格的な旅行の回復に向けてビジネスをどう進めるか、そのヒントについて考えていきたいと思います。
旅行・ホスピタリティ業界は新たな時代を迎えることになりました。旅行という消費行動は、究極の贅沢、日常生活からの逃避、自由、そして幸福の基準としての人々とってとても価値の高いものとなりました。改めて、旅行者は新しい場所を発見し、より多くの経験をし、人々とつながることで、人生を有意義なものにしようとしています。
クチコミデータを活用し、ゲストの満足度の向上につなげるヒントについては、弊社スタッフまでお気軽にご相談ください。
*2022年と2019年のデータは、2022年の各四半期末に調査を実施。クチコミデータはデータを抽出した時期によって、数字が異ってくる場合があります。
**本レポートでご紹介しているTrustYouの調査データは、四捨五入した数字を掲載しています。
英語版（原文）：What Guest Reviews Tell Us About Travel Recovery in 2022?
