User MeetUpレポート④:「運用事例から学ぶ、本社と現場の連携を強化するためのクチコミデータ活用とは」

TrustYouでは、年に一回ユーザーの皆様と、クチコミのトレンドやTrustYouの活用方法を勉強する“ユーザー様向け勉強会(通称:ユーザー会またはUser MeetUp)” を開催しています。2021年は11月10日と17日に、オンラインで開催しましたが、本ブログでは、その内容の一部をご紹介いたします。

11月17日の勉強会は「運用事例から学ぶ、本社と現場の連携を強化するためのクチコミデータ活用とは」と題して開催。ゲスト対談では、TrustYouユーザー企業様であるソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ株式会社からフルサービスホテル運営統括本部 CS担当部長の川口 シンディ 陽子 様と、ロワジールホテル & スパタワー 那覇 総支配人の武田 寛枝 様にお話を伺いました(聞き手:TrustYou株式会社 代表取締役社長 設楽 奈央)。

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以下、対談の内容をご紹介します。

設楽:これから対談を始めさせていただきたいと思います。川口様、武田様、よろしくお願いいたします。まずは自己紹介をお願いいたします

川口様(以下、敬称略):皆様、こんにちは。ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ、フルサービスホテル統括運営本部でCSを担当しております、川口 シンディと申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。ホスピタリティ業界に総支配人業も含め30年以上従事しております。色々な変化の中で、CSも変化してきましたが、そのような中で毎日を楽しんでおります。

設楽:よろしくお願いたします。本日は、御社のCSの旗振り役としてのお話を伺いしたいと思っております。続いて、現場側のホテル総支配人である武田様に自己紹介をお願いしたいと思います

武田様(以下、敬称略):皆様、こんにちは。武田 寛枝と申します。私は、2020の3月にリクルートを退職し、10月にソラーレ ホテルズ アンド リゾーツに入社し、ロワジール ホテル&スパタワー那覇で勤務をしております。総支配人に着任してからまだ1年未満ですので、いつもシンディさんに助けていただいております。以前はじゃらんの社員としてクチコミを見ていましたが、今はホテルの現場で色々と悩みながら、試行錯誤しているのが、日々の業務でございます。本日はよろしくお願いいたします。

設楽:ありがとうございます。それでは、本日のテーマに移りたいと思います。4つのテーマをご用意していまして、まずは、「CS向上のための組織体制と会社方針」について、川口様から、ソラーレ様の会社方針や組織体制についてお話を伺いたいと思います

CS向上のための組織体制と方針:“CSタスクフォース”とは?

川口:まず会社方針ですが、弊社が運営するホテルには、個々それぞれのブランドに分かれています。各ブランドのコンセプトに合ったサービスと、それにプラスαとしてのホスピタリティを提供することで、それぞれのホテルのコンセプトを最大限に活かせるように運営しております。私はCS担当として、その部分でのサポートをしております。

組織体制としては、基本的は本社の方で取りまとめたTrustYouのクチコミ分析結果に、様々な時代の変化を取り入れながら、私の方で各ホテルと協議をしたり、ヒアリングをしたりしながら進めていくという体制でございます。また、弊社の各ホテルには「C Sタスクフォース」チームの担当者がおりまして、この方々と協力しながら進めております。C Sタスクフォースの担当者は、管理職ではなく、レポートラインが総支配人に直結しているスタッフを指名しており、ある意味でパワーを持たせ、各ホテルでCS向上を強く推進できるような体制を作っています。

設楽:現場から見ると、CS推進を担当するタスクフォースが近くにいると心強いのではないかと思うのですが、武田様、その部分で総支配人様としてはいかがでしょうか。

武田:はい。クチコミでネガティブなお声をいただいた場合、「明らかに私たちが悪いよね」と思う場合があります。そのようなケースでは、すぐに調査をした上で、指摘をしてくれるので、すごく心強いチームだと思っています。基本的にはCSタスクフォースのスタッフと同じフロアで働いていて、近い距離にいます。

設楽:通常、CSのチームは本社におり、現場との距離が遠いケースが多いと思うので、御社のケースを珍しいと思いました。CSタスクフォースのご担当者様を現場に配置することになったのは、御社としてどのような背景があるのでしょうか

川口:まず現場にいるスタッフの方は、否定的なクチコミコメントを目にすることによってモチベーションが下がったり、それに恐怖さえ感じたりすることもあります。そして否定的なコメントの部分を改善しようと思うほどに、チェック機能が増えて業務量も増えていきます。また、現場にいるからこそ、「これが本当に改善できる案件なのか」、「必ず改善しなくてはならない案件なのか」を自問自答し、判断をする際にトラウマに陥ることも多々あります。

それを本社に勤務している第三者の人間として、冷静に、世の中の変化やお客さまの心の声などの色々なものを分析しながら、具体的にどのように改善したら良いのか、またどの部分を伸ばしていけるのか、ということを第三者の立場からゲストの目線に立ち、現場に落とし込んでいき、現場でのアクションにつなげていただくためのアドバイスをしています。

現場にいるからこそ、気づけない点も多々ありますので、情報を施設全体で共有しながら、強みと弱みをきちんとスタッフ全員で認識できるような情報共有を心がけています。また、現場で接客をしているホテルの皆さんが分析作業を行うのは大変ですので、現場スタッフがお客様と向き合う時間をもっと増やしていただけるよう、CSタスクフォースが分析とレポート業務を担当しています。

設楽:ありがとうございます。確かに、当事者と第三者で目線も違いますし、注目するところも違いますので、解決の仕方や優先順位のつけ方も異なりますので、分かりやすいですね。ちなみに、CSタスクフォースのご担当者様は専任のですか、それとも他の業務と兼任なのでしょうか。

川口:もちろん兼任です。CSタスクフォースはその業務だけでなく、実際に現場に立っています。CSタスクフォースチームですが、他部署に渡って組織されています。現場の苦労を知らない方だと、そのアドバイスも専門家の意見のようになってしまいますので。

設楽:確かに専任だと専門家が意見を伝えるようになる可能性はありますね。御社の場合、CSチームの心の距離も現場に近いようになっているのですね。

川口:はい。現場に寄り添いながら、やっております。CS推進に関わる業務を現場で効率的にやっていけるのか、それに対してどれだけ時間を費やす必要があるのか、対応にどれだけの時間を費やすのか、その時間が無駄だったのか、有効だったのか、現場の人間でないとわからない部分が多いと思います。

“改善の必要のない否定的コメントは捨てていく”

設楽:御社では肯定的なコメントも重要であるという共通認識を持つというご方針の一つだと伺いました。強みを明確にすることでESを磨くという観点でもクチコミコメントを活用できるのはないかと思うのですが、そのあたりいかがでしょうか。

川口:否定的なことは誰もが心が折れるきっかけになると思いますし、現場のスタッフの皆さんは否定的なコメントにとても敏感だと思います。ただし、肯定的なものはあまり皆で分かち合わないので、そこは敢えて私から共有するようにしております。なぜ肯定的なコメントを重視しているかというと、否定的なコメントには捨てるべきものもあります。例えば、ロワジールホテル 那覇の設備で○○がなかったなどのコメントをいただいてもスタッフではどうにもならない。それは、武田GMがオーナー様に交渉していただくことかもしれないです。

「改善すべきことでなければ、一旦置いておきましょう」ですとか「仕方ないですね」とか、CSタスクフォースの方からコメントを入れるように心がけています。逆に、「ホテルの強みここなので、ここを伸ばそうね」といった肯定的なコメントの部分をさらに高めて、ホテル価値を上げるということが私としては重要だと思っています。

設楽:現場としては、「捨てても良いよ」という指標が明確であるのはわかりやすいですね。

武田:シンディさんともホテルの「普遍要素」と「可変要素」について良く話をしています。普遍要素はどうにもなりません。ロワジール ホテル那覇のコメントで「温泉浴場からコンテナが見えました」というのがあるのですが、私たちのホテルは港に隣接しており、そこを変えるのはなかなか難しいところですよね。

設楽:そのような普遍要素のコメントは気にしなくても良いと、共通認識を持てるのは良いですね。

また、シンディさんや本社の方でCSに関する色々な指標を見られていると思います。本社の方で注目している指標ですとか、それをどのように決め、追跡していくのかなど、どうのようにして決めてらっしゃるのでしょうか。

川口:各CSタスクフォースのリーダーが月ごとに肯定的なコメントと否定的なコメントの比率が一眼で分かるよう円グラフ化し、分析結果をレポートとしてまとめています。各ホテルでは、自分達の強みや伸ばすべきところを確認し、改善すべきコメントの分析結果も確認しています。改善の必要のない否定的なコメントは捨てていき、強みに対するコメント部分をどのように伸ばしていくかを話し合うミーティングを毎月行なっています。

設楽:CSタスクフォースのメンバーは立候補で決まるのでしょうか。それとも会社からも指名制なのでしょうか。

川口:私からの指名となります(笑)。もちろん、今までの業務に対する姿勢や人間関係など色々なことを踏まえ、GMの承認を得てからとはなります。

時代やトレンドに合わせたC S推進:“ゲストに選択肢を与えるホスピタティ”

設楽:では、次のテーマ「時代やトレンドに合わせたCS推進」に移りたいと思います。コロナ禍でゲストがそれぞれの背景で違うことを求められていると思います、その中で、ホテルがどのようなホスピタリティに進化すべきか、どこを磨いていくべきか。御社では、ゲストに選択肢を与えるとのことでしたが、その部分について教えていただけますでしょうか

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川口:これまでのホテルの接客では、チェックイン前に、玄関にドアマン、ベルマン(ドアパーソン、ベルパーソン)がゲストをご案内して、その後にフロントで、チェックインをするという流れでした。また、ゲストから重要視される要素として、「サービス」と「価格」があったと思いますが、コロナ禍においてはそこに「安心・安全」という要素が加わってきました。

安心・安全という点では、施設の衛生管理やコロナに施設が真摯に向き合っているかどうかをゲストが判断しますが、コメントでも「感染対策はしっかりしていた」などのこれまでなかったものが多くあります。これが大きな特徴です。

コロナ以前では、スタッフが普通にドアを開けて、お客さまの荷物を持って、エレベータに同乗していた。コロナ禍で、それを嫌がるお客様もいらっしゃるのではないかと考えました。ソーシャルディスタンスを含め、提供するサービスがお客様にとって居心地の良いものなのか、それをゲストにきちんと確認しながら、“ゲストに選択肢を与えるホスピタティ”という安全・安心を基盤したサービスを常に意識しています。

設楽:確かに「こちらが良いですか」、「こうされますか」と声をかけられることで、ゲストの方で選んで大丈夫なのだなという安心感が得られますよね。

川口:「では、いらっしゃってください。ただし、こちらでお願いします」というのは、ゲストに対して強制しているのと同じなのではないかと思います。レストランでも「席はこちらでお願いします」と言うよりも、「お席はこちらでもよろしいですか」と聞いていただければ、“私には選択肢があるのだ”と思い、ゲストもホテルスタッフに向き合ってくださいます。もちろんホテルには、安心・安全のルールや法的ルールなど、守っていただくものはございますが、それ以外のところは、選択肢を与えることで、少しでも居心地良い空間で過ごしていただきたいと思います。そのために、スタッフには、ゲストと会話していただきたいと思っています。

設楽:ありがとうございます。やはりゲストに選択肢を与えるというと、お客様に全て選択肢を与えるということとは違うのですね。ホテルが決めるルール、ブレない姿勢は素晴らしいと思います。

川口:某映画で「お客様のルールがホテルのルールです」という女優の方のセリフがありましたが、これには違和感があります。安心と安全、そして法律に関するルールは、どのホテルにもあります。弊社のホテルも異なるブランドを複数運営しており、それぞれのコンセプトに合ったサービスがございます。その中で、お客さまのルールが全てのルールということであれば、その全てが壊れてしまいますし、ホテルのスタッフもそれに非常にストレスを感じることになります。

私たちはブランドのコンセプト、安心・安全、感染・衛生対策、そして法律、という部分に関してはホテル側がきちんとルールを作り、それをお客様にご理解をしていただき、なおかつ協力をしていただきながら、ご宿泊いただき、双方がウィンウィン(win-win)の関係になることを意識しています。

設楽:どこに合わせようかと迷われるホテル様も多いと思うのですがきちんとしたガイドラインがあるのはとても良いですね。現場にとっても助かることなのだろうなと思っています。

川口:そうですね。そのようなガイドラインがないと、スタッフが振り回されて、疲弊してしまうと思います。

設楽:武田様、現場ではルールなどにおける判断で、迷われることは、あまりないでしょうか。目指すところが明確になっていますか。

武田:はい、シンディさん(川口さん)とC Sタスクフォースのお陰様であまりないのですが、時に迷うこともあります。その場合は、シンディさんから、アドバイスを沢山いただいています。逆に、否定的なコメントが入ると、スタッフの方で「シンディさんに指摘される前に調べないと...」と率先して原因を調べますので、解決をするスピードも早まっています。

現場との密なコミュニケーションと人材育成:”GMを称賛する”

設楽:次のテーマ「現場との密なコミュニケーションと人材育成」ですが、お話を伺っていくと、社員を育成していくという姿勢が強いことがわかります。スタッフの皆様がより自律性を高めるために行っていることなどがございましたら、教えてください。

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川口:改善しなくてはならないことについては、私からは具体的にこのように改善しようと、提案をしますが、弊社では、肯定的なクチコミコメントの方が多いので、朝6時であろうと7時であろうと、Goodコメントを見た瞬間にGMに「おはようございます!素晴らしいですね」というメッセージを送ります。武田GMのホテルの場合は、CSチームと直結していますので、GMにゲストコメントやホスピタリティに対して興味を持っていただかないと、スタッフの教育もできませんので、とにかくGMを称賛するようにしています。

設楽:良かったら称賛する、ダメであれば注意をする。わかりやすいコミュニケーションは判断基準に迷わない、間違わないためにも必要ですね。さらに人材育成という点では、お客様に対峙する中で、プロ意識なども必要となってくると思うのですが、そのような研修、トレーニングは行なってらっしゃるのでしょうか。

川口:そうですね。コロナ禍で対面のトレーニングはできてないですが、ゲストの皆様が求めるホスピタリティが変化する節目の時期にはトレーニングを行なっています。今、世代によって求めるものが違うことが分かっておりますので、「異なる世代に対してサービスをどのように変化させていくか」というトレーニングに力を入れ始めています。

今後の展望や目指す姿: “ホスピタリティを極めることで、選ばれるホテル運営会社に

設楽:ありがとうございます。まだまだ伺いたいことは沢山あるのですが、最後に「今後の展望や目指す姿」について教えていただきたいと思います。まずは川口様からお願いします。

川口:本日はありがとうございました。私の拙い意見を申し上げましたが、これは弊社のやり方ですので、他のホテル様には当てはまらないケースもあり、一つのホテルの例として聞いていただけると幸いです。

今後ですが、私どもは異なるブランドのホテルを運営しておりますので、ESやCSはもちろんですが、CSを上げる、ホスピタリティを極めることで、オーナー様からも選ばれるホテル運営会社になれると思っております。お客様、オーナー様、スタッフの皆様、誰にとっても「素晴らしい会社だね」と言われるように今後も進めて行きたいと思います。

設楽:続いて武田様、よろしくお願いいたします。

武田:コロナ禍で沖縄の売上も大分落ちてしまいたので、まずは立て直すことが大事だと思います。「ソラーレのホテルを選んでいただいたお客様を後悔させないサービス」を徹底的に追求したいと思います。これからもよろしくお願いいたします。

設楽:川口様、武田様、本日は貴重なお話をいただき、誠にありがとうございました。

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Akira Takatsu

Akira is a Marketing Manager at TrustYou K.K. who handles PR and Marketing activities in TrustYou Japan. Over the past decade, he has used his expertise to contribute to the travel & hospitality industry.

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